相続登記の申請義務化が国会で議決

2021年08月28日

相続登記の申請義務化が今年4月の国会で決定し、2024年までに施行されます。

 

相続登記とは
亡くなった親や兄弟の土地を子どもや兄弟が相続した際に、名義人を変更する手続きを「相続登記」と言い2021年4月国会で法改正があり、義務化されました。

 

高齢化がさらに進み、相続登記は大きな課題です。日本司法書士会連合会の会長・今川嘉典さんは、「今回の法改正は画期的です。正当な理由がなく登記を怠ると過料を支払わないといけませんが、『厳罰に処する』という意味ではありません。義務化にすることで『不動産を相続したら、ちゃんと登記しよう』と意識が変わっていくのだと思います」

 

相続登記義務化への大きなポイントは、以下の3つです。

相続登記の申請義務化(3年以内の施行)
相続人申告登記の(仮称)の創設(3年以内の施行)
所有権の登記名義人の氏名または名称、住所の変更の登記の義務づけ(5年以内の施行)
相続登記と所有権の登記名義人の変更について、正当な理由がなく申請しなかった場合には、それぞれ過料を支払わないといけません。

 

相続登記をしなかった場合のデメリット
日本全国の所有者不明土地は、このままだと北海道本島の土地面積(約780万ヘクタール)に匹敵する720万ヘクタールに匹敵します。所有者不明土地とは、所有者を正式に決めるまでに手続きだけで多くの時間がかかり、すぐに売却ができません。今川さんは「相続登記は、しないでも当面は困らないので、放置され続けてきた側面があります。ただ、その結果、相続人が増え続けることで、所有者不明土地が増加してきたのだと思います」と教えてくれました。

 

他にも未登記の土地が増えた場合、公共事業や再開発を進めようとしても、所有者を探す時間や費用はもちろん、手続きに膨大なコストもかかります。また、災害が起きた際、復興に向けた用地取得も難しくなります。生活面では、時に相続人が数百人に及ぶこともあります。そうすると、土地を活用しようとしても、全員に連絡して了解をもらわないといけません。こういったことを踏まえ、この問題に解決の道筋をつけるため、国は相続登記の義務化を模索し、この法改正を国会で成立したわけです。

 

相続登記の義務化の内容

相続登記の申請は3年以内。もしも、正当な理由がないのにも関わらず、この二つの申請を怠った時は、10万円以下の過料を求められます。新たに「相続人申告登記」(仮称)も創設され、正当な理由がなくて申請していない場合は、5万円以下の過料を払わなければなりません。施行は3年後の見通しです。

登記名義人の住所変更などは2年以内。所有権を持つ名義人の氏名や名称、住所に変更が生じた場合は、変更があった日から2年以内に申請しなければなりません。土地の所有者が転居を繰り返して所在が分からなくなることを防ぐのが狙いの一つです。この義務は5年以内に施行されます。

 

相続等により取得した土地を国庫帰属させられる
今回の法改正では、もう一つ大きな目玉があり、相続した土地を、法務大臣(窓口は、各地の法務局)に申請し、承認を得た上で国庫に帰属させる制度です。目的としては、土地を所有し続ける負担が大きく、手放したいと思ったときに、国有地にしてもらうものです。ただし、以下のような制限に引っかかるものは、該当しません。

・建物のある土地・・担保権または使用、収益を目的とする権利が設定されている土地
通路やそのほかの人による使用が予定されている土地として政令で定める土地が含まれている
・土壌汚染対策法第2条第1項に規定する、鉛やヒ素といった特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る)により汚染されている土地
・境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属または範囲について争いがある土地
他にも、まだいくつかの要件があります。

 

国庫に帰属させるには、承認を得て所有権を放棄して全て終わりになるわけではなく、10年分の管理費を支払わなくてはいけません。現段階では、法務省が公表したスクリーニング調査結果によると、要件を充足する土地は、土地を所有している世帯単位でみると約1%にとどまるようです。今後、実際に運用していく中で、対象が増えていくかもしれません。

 

相続登記の手続き
相続人から土地などの不動産を相続した際、相続人が名義変更する手続きです。正確には「相続による所有権移転の登記」といい、土地や建物を所有している人が亡くなった場合、名義を相続人に変更する手続きです。手続きは、遺言や遺産分割協議の有無によって、必要書類などが違ってきますが、どちらも膨大な戸籍謄本等の書類が必要です。詳しくは、司法書士にお尋ねください。

 

また、長い間、相続登記をしていない場合、相続人を正確に把握する必要があり、戸籍の読み方も難解になります。親や祖父母が引っ越しに伴い本籍地を変えていた場合、それぞれの市区町村役場から取り寄せる必要があり、全てを集めるのには手間と時間がかかります。

 

縁遠くて顔を合わせたことのない人が相続人になっていると、コミュニケーションが難航する恐れもあります。相手の立場から考えると、知らない人から、突然、書類が届きサインなどを求められ警戒されるからです。もしかすると「詐欺かも?」と疑われるかもしれません。このほか、行方不明者がいたら、家庭裁判所で不在者財産管理人の選任を申立てるか、あるいは失踪宣告を申立てる必要もあります。

 

これらのことを考えると、まずは司法書士に依頼して、どれぐらいの労力がかかるのかを確認し、場合によっては依頼したほうが負担は少なくて済むかもしれません。法律の施行まで時間があるものの、先回しにしてしまうと、さらに相続人が増えて手続きが複雑化する恐れもあります。先延ばしにしないで取りかかることで、スムーズな手続きにつなげられると思います。

 

日本司法書士会連合会では、全国に相続登記相談センターを設置し、相談受付全国統一フリーダイヤル(0120-13-7832)も開設して、相談に応じています。

 

参考資料:日本司法書士会連合会

 

(記事の情報は2021年4月23日現在の情報に基づいています)

 

 

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