相続物件の登記が義務化

2024年05月23日

 

今年の4月1日に相続に関して大きなルール変更があり、「相続した不動産に関して登記を義務付けされる」ことになりました。

 

手間と費用が必要なので法的な規制が緩く、放っておいても許された相続登記ですが、相続登記さないまま、管理もされずぼろ家になったごみ屋敷や幽霊戸建てが社会問題となり、農地や山林を含めると面積は九州全体を超え北海道の面積に迫りつつあります。

 

そこで相続人全員の合議がなくとも相続人のだれかを所有者として持分登記させることで未登記の不動産を減らす・・・また所有者を明確にすることで固定資産税を徴収するという二つのことを推進させるのがこの法律の目的です。

 

では登記をするメリットとは・・・法律上での第三者対抗要件です。つまり、この不動産は私のものだと他人に主張できるのです。ある不動産の所有権を主張する者が現れた場合、その者に対して自分が所有していると登記簿で示して自分のものだと主張できることです。

 

ただし、相続登記はこれまで法的義務ではなかったので、必ずしもすべてが行われてこなかったのが実態です。

 

大都市圏にあって不動産価値が高いものであれば、自分の権利を主張、対抗できるようにしておくことにはメリットがあるのですが、たとえば親から先祖代々のものだからといって引き継ぐ地方の山林、田畑、あまり買い手がいそうにない不動産などはメリットがありません。

 

さらに登記が進まない理由としては、登記した際に登録免許税が課され、税率は固定資産税評価額の0.4%。地方の土地でも面積が大きければ意外と金額は膨らみます。

 

登記にあたっては手続きも複雑で、しかも相続人全員の印鑑まで必要な場合もあります。そうした費用と手間をかけてまで、自分の所有を表明する必要を感じない不動産については登記が行われずにきたのです。

 

そして、国はついに不動産相続に際しての登記の義務化に踏み切り、2021年4月に不動産登記法が改正され、相続が発生した際には相続した土地建物について登記を行うことが義務となりました。

 

具体的には「相続開始および所有権を取得したと知った日から3年以内に登記する」こととされ、遺産分割協議が3年以上の長期に及んだ場合でも「遺産分割が決定されてから3年以内に登記する」とされ、このたび2024年4月1日以降の相続から本格的に適用されます。

 

これに違反すると罰則が適用され10万円以下の過料が科せられます。また登記後の氏名や住所の変更についても手続きが義務化され、従わなかった場合には5万円以下の過料となります。というように改正以前に相続した不動産についても対象で、違反者には罰則もあります。

 

今回の改正は2024年4月以前に相続した不動産についても、相続登記が義務化されます。つまり、2024年4月以降になると、以前に相続した土地や建物についても3年以内に相続登記を済まさなければならなくなりました。

 

かつて親から譲り受けていた実家や山林などの不動産についても登記をしていないと、法律違反に問われるというのですから穏やかでありません。特に地方では、親子同士で、資産が自然に継承されてきた結果、いちいち登記を行っていない不動産が多数存在します。土地の所有者を明確にしていくためには絶対に必要な改正なのですが、その社会的な負担は膨大です。

 

しかし、若干の規制緩和もあり、これまでは相続登記の際は、当該不動産を相続するすべての相続人の同意が必要でした。兄弟で相続していて、兄弟のうちの誰かがすでに亡くなっているようなケースもあるでしょう。その場合は亡くなった人の相続人に権利は移っているはずです。また、いまとなっては、なかなか連絡がつかないというケースも多くあります。

 

そこで今回の改正では、自らが進んで単独で自分の持ち分についてのみ登記できるようにして、登記しやすい環境づくりに配慮することになりました。しかし、2024年4月以降のこの改正は、すでに相続を受けた人たちにも対象を広げ、登記を義務化することを狙っており、3年という期限も含めてかなり乱暴な措置ともいえます。

 

もし、皆様の中に相続登記をされていない未登記の不動産があるのでしたら、早いうちに登記なさることをお薦めいたします。

 

5-23相続物件